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手の外科

ばね指(弾発指・腱鞘炎)について

ばね指は「弾発指」や「腱鞘炎」と同義語で、すべて同じ意味です。ばね指もまた外来でよく見かける手の外科領域の疾患の一つです。

図1 弾発現象

(日本手外科学会 手外科シリーズ3 ばね指より引用)

「弾発現象」(図1)が、最もよく見かける症状です。弾発現象とは、一旦指を深く曲げると指を伸ばすときに引っかかって伸ばせない、あるいは伸ばせても「カクッ」という感覚と痛みを伴うといった現象です。または、「起床時はいつも指が曲がっていて、自力では伸びないので反対の手で伸ばす(けれども痛い)」といった症状もあります。

図2 病態

(日本手外科学会 手外科シリーズ3 ばね指より引用)

図2にありますように指を曲げる「腱」は「腱鞘」というトンネルを通過します。腱と腱鞘の太さのバランスが崩れた状態がばね指です。すなわち、使い過ぎなどで炎症を生じ腱が太くなるかあるいは腱鞘が狭くなれば通過障害を生じます。この通過障害がすなわち弾発現象です。

治療の概要を図3に示します。

図3 治療

(日本手外科学会 手外科シリーズ3 ばね指より引用)

当然のことですが、指の安静が最も重要です。が、多くの方が仕事・家事などで安静にしていられないと思われます。最も効果的で最も短期間に効果を発揮するのがステロイド注射です。ステロイド(という薬品)は腱や腱鞘に生じた炎症を効果的に鎮静化します。

ただし、ステロイド注射の副反応について知っておく必要があります。最悪の副反応は「腱(皮下)断裂」です。ステロイドによって腱がちぎれて指が全く動かなくなります。しかしながら確率的には非常に稀です。
私は九州労災病院に約20年間在籍し手の外科治療に従事しましたが、私自身はステロイド注射による腱断裂に一度も遭遇したことはありません。また、私の周囲の同僚たちもまた同様です。整形外科学会などで報告はあるものの、「おそらくは交通事故にあう確率以下かもしれません」と患者様には説明しています。
このように副反応のリスクは無視できる程に少ないと思われます。ただし、もし生じれば大変重篤な症状を呈しますので、注射の前に必ず説明し同意を得た上で注射を行っています。

私見では、初回のステロイド注射で約半数の方で症状(=痛みを伴う弾発現象)の完全な消失がみられます。残りの四分の一の方では弾発現象は残っているが、疼痛は消失します。残りの四分の一の方で疼痛あるいは弾発現象が残存します。このような方には初回の注射から一週間の間隔を空けて二回目の注射を行います。二回目の注射を行っても何らかの症状が残存する患者様には手術をお勧めいたします。なぜなら、注射による改善が限定的であるにもかかわらず前述の副反応(=腱断裂)のリスクがいたずらに増加する一方であるからです。

手術に関しては、手術設備のある総合病院を紹介するか、もしくは患者様のご希望があれば提携している九州労災病院(小倉南区)の手術室をお借りして私が執刀いたします。

図3に示しますように、5ミリから1センチほど皮膚を切開してその下層に位置する腱鞘を切開します。日帰りで行うことが可能で、手術時間は約10分です。抜糸まで約2週間を要します。私が執刀する場合手術後のガーゼ交換や抜糸だけではなく、手術後のリハビリなどを当院で行うことができるというメリットがあります。

以上のようにばね指の病態と治療に関するごく一般的なことを述べました。が、実際には個々の患者様ごとに種々雑多な病態が混在しています。弾発現象の原因がどの腱鞘(ここでは触れませんが腱鞘は複数あります)にあるか、第二関節(指先から数えて二番目の意)は固まっていないか(拘縮してないか)など、手術の前に十二分に考量する必要があります。
もし見落とすと予想通りに手術結果が得られませんので、ぜひ手の外科専門医の受診を推奨いたします。

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